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2020年3月

2020年3月15日 (日)

イタリアの昔話5 おまけ いちじくについて

昨日放送したNHKの番組「ブラタモリ」は、島原と天草でした。番組の中で、いちじくを南蛮柿と紹介していました。検索してみると、1591年に天正遣欧使節が帰国した際の引率者の神父の記録(手紙)があるそうです。「ポルトガルのリスボンから、いちじくの苗を持ってきた。」天草はいちじくの発祥の地としてフェアなどをされていました。また、唐柿の呼び名もあり、唐から長崎経由で伝わったという説もあるようです。

いちじくは実家のすぐ脇の畑に柿の木と並んであり、秋のおやつとして柿とともに美味しい身近な果実でした。その大きないちじくの木は、鳥と分け合っても十分過ぎるくらいたわわに実が成りました。母が毎年作ってくれるいちじくジャムは美味しかったな。昔の人が渡来のいちじくに”柿”という字を使ったのは、納得できます。

生まれた時からあるものは、あることが普通と思ってしまいがちです。話はとびますが、今の子どもたちにとっては、生まれた時からあるスマホは普通のものなのだろうなと思いました。

2020年3月12日 (木)

イタリアの昔話4 ハーブと「ローズマリーの娘」

「ローズマリーの娘」のローズマリーは、記憶力・集中力を高め、血行促進、抗酸化作用があり「若返りのハーブ」と呼ばれるそうです。(ブログ「ハーブのちから」より)学名は「海のしずく」ラテン語の由来は、ローズマリーの青紫の花が海のしずくのように見えたからとのこと。地中海沿岸の乾燥した地域に自生するハーブです。(ブログ TOKIWAより)常盤植物研究所のブログには、キリストに関する伝説もあるようです。昔は白い花であったが、聖母マリアが子どものキリストを抱いてエジプトに逃れる途中、ローズマリーの茂みにキリストの衣を干すと、花の色が青く変わり、それはマリアの清らかな心を表しているのだそうです。花言葉は貞節・純潔。ヨーロッパでは花嫁から花婿に付き添いの女の子が、貞節の誓いとしてローズマリーの花束を贈るしきたりがあるそうです。

イタリアの昔話「ローズマリーの娘」では、娘は愛するスペイン王が戦争に行って不在の時に、彼の妹三人にいじめられ半殺しにされてしまいます。それでも愛を貫く娘の心根の清らかさが、昔話を通して爽やかな美しさをその香りとともに伝えてくれます。「ローズマリーの娘」はその他にもユニークな雄と雌の竜や、忠義な庭師などの助演者がいて彩りを豊かにしてくれています。

私はシチリアの雰囲気を少しでも味わおうと白山にあるシチリア料理のお店「シチリア屋」に行ってきました。”フィノキット団子”というのがありました。ハーブのフェンネルを丸めてお団子状にしたものに、冷製トマトソースがかかっています。草のお団子・・・食べたことのないお味。お店のメニューには、シチリアでは一般的でシチリア屋の名物と書いてありました。フェンネルは地中海原産で、ラテン語は「小さな干し草」を意味する言葉から由来しているとか。干し草、わかる気がする。かかっているトマトソースはとても美味しかったです。

『みどりの小鳥』にはシチリアの昔話で「とり小屋の王子さま」というはなしがあります。
貧乏のどん底にある靴直しの家に住む三人の娘は、食べるために野草を探し回ってとうとう王さまの領地に入りウイキョウの大きな株を見つけます。ウイキョウはフェンネルのことです。シチリアと「ローズマリーの娘」いかがでしたか?なんだか、シチリアに行った気持ちになりました。
参考資料
『みどりの小鳥』イタロ・カルヴィーノ作 岩波書店

イタリアの昔話3 「プレッツェモリーナ」とハーブ

ゲーテは「イタリア紀行」でイタリアの果物、イチジク、梨などを味わい楽しみました。『ゲーテ「イタリア紀行」を旅する』では、ゲーテの言葉「上等な梨を食べてみた。しかしぼくはぶどうや無花果にあこがれている」が引用されています。『ゲーテ「イタリア紀行」を旅する』の作者牧野さんは、「18世紀当時ワイマール(ドイツ)では無花果は育たなかったと思われる」と書いています。イタリアの昔話には、シトロン(オレンジ)・梨・無花果・りんご・石榴などの果物が出てきます。また、地中海原産のハーブもよく出てくるのが特徴と思われます。

「プレッツェモリーナ」は「イタリアでは最もよく知られたおはなしのひとつ」とカルヴィーノさんは言っています。日本ではあまり知れらていませんが、福音館書店のこどものとも2019年3月号で『プレッツェモリーナ』が発行されています。イタリア語でパセリは「プレッチェモーロ」、「プレッチェモリーナ」はかわいいパセリちゃんという感じです。身重の母親が隣の魔女の家の畑で栽培されているパセリが食べたくて仕方がなく、縄梯子を使って降りて食べているところを魔女に見つかり、産まれた子どもをくれるよう要求されます。すくすく育ったプレッツェモリーナは、ある日魔女に連れていかれます。魔女たちは彼女に難題を出してできなければ食べようとします。しかし、彼女が行く先々で助けてあげた物や人などの援助者が、帰りは助けてくれて無事に帰ることができます。グリムの「ホレおばあさん」もそうですね。一方、別のタイプもあります。『ペンタメローネ』に所収されている「ペトロシネッラ」です。前半は同じですが、後半娘は魔女に高い塔に閉じ込められます。塔に王子が通ってくるのを魔女に知られるや、娘は魔女の魔法のどんぐりを盗んで逃げだします。追いすがる魔女に向けて、どんぐりを投げつけると、ものすごいコルシカ犬やおそろしいライオンなどが飛び出してきます。「三枚のお札」「かしこいモリー」のパターンを思い出します。イタリアの昔話「プレッツェモリーナ」の後半は、ふたつのパターンがあるようです。


『ペンタメローネ』は1634-36年出版、グリム童話初版が出版されたのは1812年です。『グリム初版を読む』で作者の吉原さんは以下のように書いています。「マックス・リューティの研究から「ラプンツェル」は、1698年刊のフランスのルイ14世の宮廷の女官であったド・ラ・フォルスの妖精物語『ペルシネット』のドイツ語訳であることが明らかにされた・・・。それは、地中海に広がる「プレッツェモリーナ」「ペトロシネッラ」が下敷きになっていると思われる。」横道にそれてしまいました。今回はこの辺で(^^♪

参考資料
『ゲーテ「イタリア紀行」を旅する』牧野宣彦著 集英社
『イタリア民話集 上下』イタロ・カルヴィーノ著 岩波書店
『プレッツェモリーナ』剣持弘子再話 小西英子絵 福音館書店(こどものとも2019年3月号)
『ペンタメローネ』杉山洋子・三宅忠明訳 大修館書店
『グリム初版を読む』吉原高志・吉原素子編著 白水社

イタリアの昔話2 シチリアについて

シチリア島は四国より大きく九州よりは小さい島で、イタリアでは5番目に人口が多い地域です。地震や津波で街がなくなった悲しい歴史を知ると、日本と同じ島国なのだなと思います。1787年にはドイツ人の文豪ゲーテが訪れていて、『イタリア紀行』を著わしました。『ゲーテ「イタリア紀行」を旅する』(牧野宣彦著 集英社)によると、ゲーテはシチリアがイタリアの穀倉と言われているのを見たいと思い、カルタニセッタでその通りの光景を見て感動しています。ゲーテはシチリアに40日間滞在して教会の美術品などを見てまわりました。シチリアの歴史は古く、ざくっと、ギリシャ→ローマ帝国→ビザンチン→アラブのイスラム系民族→フランスのノルマン朝→神聖ローマ帝国→スペイン→1860年イタリアに統合となります。海上貿易で大商人がいた一方で、民は支配者の圧政から自衛するためマフィア組織を生み出しました。

シチリアの昔話にはイギリス王の娘、ポルトガルの王子さま、スペイン王の娘など他国の王や王子なども出てきます。また、パレルモにある聖ロザリアの聖堂が舞台となるドラマチックな「エルバビアンカ」というおはなしがあります。シチリアの歴史を知ると、イタリアの昔話をよりいっそう楽しむことができます。

塩野七生さんの本『皇帝フリードリッヒ2世の生涯 上下』(新潮社)は、神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ2世(1194-1250)の56年の生涯を追っています。塩野さんによると、フランス北部のノルマンディー地方からオリエントに巡礼に行った帰りに、イタリアの長靴のふくらはぎのところにあるモンテ・サンタンジェロの聖地に参った騎士たちがそのまま南イタリアに住みついてノルマン王朝が始まったそうです。200年ぶりにシチリアをイスラムからキリスト教下に取り戻す”解放”は、大きな意味がありました。そのノルマン朝の唯一の正統な後継者であるコスタンツァと結婚してナポリとシチリアを支配下にしたのが皇帝フリードリッヒ2世の父でした。

フリードリッヒ2世は幼少期を父の故郷ドイツではなく、さんさんと光降り注ぐ明るいシチリアの首都パレルモで過ごしました。当時はギリシャ正教のギリシア系、イスラム教のアラブ系、カトリックキリスト教徒のノルマン系の三者が入り混じって暮らしていたそうです。他民族国家の中でいろいろな文化に触れたことは彼が以後広い領土を支配するにあたり、大きな影響を受けています。32才で急死した父の後を受け彼はわずか3才でシチリア王になり、14才でスペインのアラゴン家の王女コスタンツァ(皇后と同じ名前)と結婚します。王女が持参金代わりに持ってきたのは500人の騎士でした。彼の肩書は神聖ローマ帝国皇帝、シチリア王、ドイツ王、イタリア王、エルサレム王です。13世紀のシチリアを例にとっても、これだけ民族が交じり合っている様子はおわかりいただけたと思います。昔話は小鳥のようにあちこちの国を飛びまわって、その地域特有の色をつけ人々の楽しみになっていたのですね。

参考資料
『ゲーテ「イタリア紀行」を旅する』牧野宣彦著 集英社
『皇帝フリードリッヒ2世の生涯 上下』塩野七生著 新潮社


2020年3月11日 (水)

イタリアの昔話「ローズマリーの娘」

最近私は、イタリアの昔話から「ローズマリーの娘」を覚えました。出典は『みどりの小鳥 イタリア民話選』(イタロ・カルヴィーノ作 岩波書店)です。これはシチリア島にある大きな港町パレルモとスペインが舞台の昔話です。文学者であるカルヴィーノは、イタリア全土から選りすぐった200篇『イタリア民話集』を1956年に出版しました。さらに、1972年には子ども向けの民話集『みどりの小鳥』を出版しました。

イタリアの昔話の伝統は古くからありました。ヴェネチアのストラパローラ『愉しき夜』(1550,1552)はヨーロッパ最古の民話集で、ペローの「長靴をはいた猫」に影響を与えたと言われる話が入っています。ナポリのバジーレ『ペンタメローネ(五日物語)』(1634-36)もあります。さらに、19世紀末のグリム兄弟の影響はイタリアにもきて、シチリアとトスカーナ地方で充実した民話集が出版されました。『シチリアの民話 全4巻』ジュゼッペ・ピトレ(1875)『モンターレの民間伝承話60篇』ゲラルド・ネルッチ(1880)のふたつです。カルヴィーノは自ら採集はせず、上記のような既存の昔話集から編纂しました。

医者であったピトレは、大規模な採集作業班を使って300篇の民間伝承話『シチリアの民話 全4巻』を完成させました。ピトレは民俗学研究に身を捧げ、パレルモに「民俗博物館」を創設したとのことです。量的にも質的にも高いと言われるシチリアの昔話は、ピトレ家に古くから出入りをし下女をしていた老婆メッシーアの存在が大きかったようです。文字は読めないが驚くべき記憶力の彼女は、現実の世界から空想の世界をかき立て生き生きと昔話を語ってくれたとピトレは書いています。「ローズマリーの娘」はシチリアの昔話ですから、メッシーアの語りでしょうか?おはなしが次々に展開していく様は興味を引き立てます。

イタリアの昔話の特徴として、「三つのオレンジ」に代表されるように果実と娘の甘く美しい関係があるおはなしがあります。「りんごむすめ」は、「ローズマリーの娘」と似ていますが、りんごから生まれた娘が夫である王子の”まま母”の嫉妬からナイフで刺される場面は、真に迫るものがあります。「ローズマリーの娘」は、子どものいない女王が子どもの葉がたくさんあるローズマリーの茂みを見て哀しむ場面から始まります。女王はやがて母親になりましたが、ローズマリーの苗が産まれてしまったのです。女王はミルクをかけて大切に育てていましたが、甥のスペイン王が気に入って国に持ち帰ります。スペインではローズマリーの茂みから出てくる美しい娘を三人の妹が嫉妬します。聞き手は現実と結び付けておはなしを楽しみ、さらに、果物や植物の色や味、香りを加味した爽やかでみずみずしい娘を想像して五感を使っておはなしを堪能できるのです。

『イタリア民話集』は巻末に一話ごとに詳細な解説がついていますが、『みどりの小鳥』には解説がありません。子ども向けのおはなし集のため解説をつけてないのだそうです。ですから、このおはなしの詳細は知ることできません。しかし、カルヴィーノは、『イタリア民話集』にこう書いています。「女から野辺の果実へ、女から野辺の草へ、と変身を遂げるさいの、あの共有の美的感覚に、ぜひ注目していただきたい」と。


<参考資料>
『イタリア民話集 上下』イタロ・カルヴィーノ著 岩波書店
『みどりの小鳥』イタロ・カルヴィーノ作 岩波書店
『イタリアのむかし話』(大人と子どものための世界の昔話1)大久保昭男訳 偕成社
『子どもに語るイタリアの昔話』剣持弘子訳・再話 こぐま書店
『カナリア王子』イタロ・カルヴィーノ再話 福音館書店

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