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2020年2月

2020年2月22日 (土)

エッツ「わたしとあそんで」より 山の思い出話

今回は私の子ども時代の思い出話です。農家が貧しかった時代、我が家は小作の後わずかな農地で米を作っていましたが、それだけでは生活が厳しく、牛を飼い炭を焼いて生活費の足しにしていました。私は小学校2年だったと思います。分校から家まで、片道2キロ。4時間授業後給食を食べてから家に帰ると、誰もいませんでした。本校に通っている姉がバスで帰宅するのは5時近くで、まだまだ時間がありました。家族で山に炭焼きに行っていることは知っていました。誰もいない家にひとりでいることが急に寂しくなり、私は家族がいる山へ行こうと思いました。私は思い立つとすぐに行動に移す性格でした。山までの道は家族と何度も通っているので覚えているし、約1時間かかることもわかっていました。

川に沿って二人くらいがやっと歩ける山の際にある狭い道をずっと辿って行くと、山への入り口があります。そこからは道なき道、石がごろごろある斜面をひたすら登って行きます。山の上の方まで来ると、向こう山の中腹から炭焼きの煙が上がっているのが見えます。そう、結構遠いのです。なら梨とりの昔話を聞くと、この道を思い出します。子どもながらに目立つ松の木や水の流れや植生などの目印を覚えていました。母に教えられていたのです。母親は山野草好きで山を愛する人でした。母からは毎回、道中自生している植物のことなどを詳しく聞いていたので、迷いなく行けたのだと思います。遠かったですが、向こうに見える炭焼きの煙が私に勇気を与えてくれました。そして、凛とした山の風が私を励ましてくれている気がしました。一方で、いつも家族と登る山道を、独り占めして登っていることがとても嬉しく心地良かった。私が山に着くと家族は驚いたと思うのですがその記憶はなく、妹に会えて嬉しかった思いしか残っていません。妹は小屋の高い梁から縄を下してブランコを作ってもらっていました。親の仕事が終わるまで、二人でブランコで遊びました。

その日は父親をひとり残して山を下りました。父親は、今夜は炭焼きの寝ずの番をするのです。家に帰り布団に入って眠るまで、私は父親が今いる真っ暗な山のことを想像しました。すぐそこに熊や狐がいる真の暗闇の中、炭を焼く赤い火だけを見つめて、たったひとりでいる父のことを。翌朝、開ける時はギーギー音がする古い板張りの裏口の戸が開いて、父親がにこにこして「ただいま」と帰ってきた時は、心から安堵しました。そして、父親のことをとても尊敬しました。男に生まれていさえすれば、父親の仕事を助けられたのに。男に生まれて、父親のように山にひとりでいられる強い人になりたかったと思っていたのでした。

マリー・ホール・エッツが『わたしとあそんで』の絵本を作ったのは、60才の時でした。そして、私は今ほやほやの61才。子どもの頃を思い出す年齢なのかもしれません。
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2020年2月21日 (金)

エッツ『わたしとあそんで』より

マリー・ホール・エッツの『わたしとあそんで』(福音館書店)は1955年に発行されました。エッツ60才の作品です。30年くらい前私はこの絵本に出会い、「これは私自身の子ども時代そのものだ!」と感動しました。今でも一番好きな絵本ですし、心の友というべき大切な絵本です。頭にリボンをつけた女の子が原っぱに行きます。カエル、カメ、リスなどの動物に「わたしとあそんで」と声をかけますが、みな逃げて行きます。しかし、女の子が音をたてずにじっとしていると動物たちがもどってきました。お日さまは暖かい光を降り注ぎ、優しく女の子を見守ります。鉛筆でしょうか?黒い縁どりに黄と茶色のわずかな彩色、背景は淡いクリーム色で全ページ統一されています。女の子の幸せな気持ちに、読んでいる方も心が満たされます。

私は山陰の山間部に三姉妹の真ん中として育ちました。隣家とは何メートルも離れているような田舎のこと、分校の友達の家に遊びに行きたくても、歩いて10分からそれ以上かかるような家ばかりでしたから、遊び友達はもっぱら姉と妹でした。ずっと家族と過ごしていると、ひとりになりたくなります。私は野原や畑や田んぼ、川など家の周りの自然がすべて好きでした。四季折々に刻々と変化し、二度と同じ風景を見ることはない山と空を飽きることなく朝から夜まで眺め、すべての自然の色が自分の身体に染み入るように感動し、美しいと思いました。暇があれば、おにぎりを作って外で何時間かひとりで過ごしました。これは至福の時でした。土と草の匂いを嗅ぎながらぼんやりしたり本を読んだりしていました。風は冷たい時もあるし優しい時もありました。これは、短大に入るために上京する高校まで続きました。自然は私にとって大切な友達だったのです。

私は幼い時『わたしとあそんで』のような時を過ごしました。楽しそうに鳴いているバッタといっしょに遊びたいのに、私が草むらに入るとみんなが一斉に逃げて行く。何度か繰り返した後にあきらめてじっとしていると、虫たちが戻ってきてまたやかましく鳴くではありませんか。その声を聞いていると、自分が自然の一部になったようでとても楽しかった。しかし、それは容易なことではありません。身体を動かさず気配を消して待つのはとても難しいことでした。せっかく戻ってきても、その嬉しさに少しでも身体が動くと虫は一瞬で去っていきました。

子どもがひとりで過ごす喜びの時、それは誰しも心の奥に大切に持っているものと思います。暗いくて狭い押し入れの中も大好物だったのでは。ひとりで思いを巡らしたあの時間が、果実の種のように自分を作っていると思う時があるのではないでしょうか。
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2020年2月20日 (木)

マリー・ホール・エッツ 『もりのなか』より

『もりのなか』の作者、マリー・ホール・エッツは、1895年にアメリカ ウィスコンシン州で生まれました。父が牧師であったため転々としたけれど、ウィスコンシンのノース・ウッズで子どもの頃に過ごした思い出が一番楽しかったそうです。「私はひとりで暗い森の中へ駆けていき、何時間もすわって、松のこずえを渡る風の音を聞きながら、森の生き物たちが現れるのを待っているのが好きでした。」と語っています。そこには、小鹿をつれた鹿、ヤマアラシ、アナグマ、カメ・・・毒蛇なども現れたそうです。1935年『ペニーさん』(福音館書店)1939年『赤ちゃんのはなし』(福音館書店)に次いで、3作目が1944年『もりのなか』(福音館書店)です。1953年には続編の『また もりへ』を発行しました。

『子どもが孤独(ひとり)でいる時間(とき)』(エリーズ・ボールディング作 松岡享子訳 こぐま社)には、子どもが孤独(ひとり)でいる時に自己を見つめ、取り込んだことを整理する過程において豊かな果実が実ることを示唆しています。『もりのなか』は、ひとりで森へラッパを持って行く男の子のわくわくする気持ちが伝わってきます。カラーでなく白黒の絵本ですが、これが森の奥深さを伝え、イメージする力を高めてくれます。私が注目するのは、地面の描き方です。真っ直ぐに一定の高さが保たれていて、草が繁るしっかりした地面が描かれていることで、より動物たちが列を作って歩く様子に現実味が増します。また、白黒の絵本に唯一ある色が表紙の茶色です。このたった一色が、非常に落ち着きのある世界を感じさせます。

『もりのなか』は私自身の子どもにも毎晩数えきれないほど読んでいました。当時、読んでいる私にとっては退屈な絵本という印象でした。なにしろ字を追っているので、おはなしの世界に入り込めないのです。この絵本ほど誰かが文字を読む声を聞きながら、絵を見るにふさわしい読み方はないでしょう。おそらく子どもの心の中では、アニメーションのように動物たちが動いているに違いありません。完成した大人は、成長途中にある子ども時代の感覚をすっかり忘れています。絵本を読む声に導かれて物語の世界に入り込む子ども特有の読み方を知らないと、シンプルで一見地味な印象を受ける絵本が、こんなにも子どもの心に寄り添った素晴らしい絵本だということに気が付かないでしょう。次回は、エッツの『わたしとあそんで』から私自身の子ども時代の思い出を書きます。

<参考資料>
『もりのなか』『また もりへ』マリー・ホール・エッツ文・絵 まさきるりこ訳 福音館書店
『絵本図書館 世界の絵本作家たち』光吉夏弥作 ブックグローブ社
『マリー・ホール・エッツの世界』木城絵本の郷編・発行
『3人の絵本作家』ブックグローブ社
『子どもが孤独(ひとり)でいる時間(とき)』エリーズ・ボールディング著 こぐま社
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2020年2月17日 (月)

国分寺キッズステーションおはなし会

国分寺キッズステーションおはなし会 4・5才児クラス 2020年2月

『ぼくのねこみなかった?』エリック・カール作 偕成社 『あおい目のこねこ』エゴン・マチーセン作 福音館書店 ♪うちのうらの くろねこは(人形)”ひなどりとねこ”『こども世界の民話 下』実業之日本社 『ウシバス』スズキコージ作 あかね書房(2回)

今回は、ねこ・ねこのおはなし会です。『あおい目のこねこ』は幼年向きの物語ですが、最後までとても楽しみました。子どもたちは、本の中に出てくる物・展開すべてひとつひとつを味わうように楽しんでいました。くじけそうになるあおい目のこねこに、「あきらめちゃだめ!」と声をかけ、ねずみのくにに連れていってもらった黄色いねこに「ありがとうはいわないの?」そして、黄色いねこが「ありがとう、こねこくん。きみは、へんてこなねこどころか、とてもすてきなねこだなあ。げんきがよくて、まるまるしていて・・・。」の言葉に、すっかり満足したのでした。最後のページ、あおい目のこねこと黄色い目のねこたちがまるまるしていて幸せそうなこと!そして、裏表紙にはまるまるとしたあおい目のこねこが!その表情と体つきを見ると、みんなの笑顔がこぼれました。この本は瀬田貞二さんの翻訳です。溌剌とした子ねこの感じが、瀬田貞二さんの粋な言葉で表現されているので、声に出して読んでいても心地が良かったです。

”ひなどりとねこ”は、今日の園児の年齢にぴたりと合っていました。ひなどりがクシャミを我慢する中、お母さん鳥に「クシャミをさせて」と繰り返しお願いする場面では、おはなしを聞いて真っ直ぐ私を見ている男の子の目がどんどん見開かれて行き、大きなくしゃみで大笑いする様子に、私も楽しくおはなしをさせていただきました。『ウシバス』はいつものように、子どもたちは絵本の文を大きな声を出して読み、お決まりの2回読みました。

2020年2月15日 (土)

国分寺キッズステーションおはなし会

国分寺キッズステーションおはなし会 2020年2月 2才・3才児クラス

<2才児クラス> ♪ねずみねずみ どこいきゃ(人形)、ぎっちょ ぎっちょ、せんべせんべ やけた、たこたこあがれ(布)、にぎりぱっちり(布)『せんべせんべ やけた』真島節子絵 小林衛己子案 こぐま社 『ゆきがふってきたの』南塚直子作 福音館書店(こどものとも0.1.2 2018.12) 『ゆきのひのうさこちゃん』ディック・ブルーナ作 福音館書店 『さんびきのおさる』あべけんじ作 福音館書店

先月のおはなし会で読んだ絵本『ちびすけどっこい』が印象に残っているようで、「きょうは、本はないの?」布を出せば、先月の♪にぎりぱっちりを上手にやってくれました。前回のことをよーく覚えてくれています。『せんべせんべ やけた』は、もちろん絵本でもわらべうたでも楽しみました。『ゆきのひのうさこちゃん』は全員が声も出さず静かにじっと見ていました。

<3才児クラス> ♪ねずみねずみ どこいきゃ(人形)、たこたこあがれ(布)、ちびすけどっこい、どっちんかっちん かじやのこ 『せんべせんべ やけた』 『もりのなか』マリー・ホール・エッツ作 福音館書店 『さんびきのおさる』

ひとりの男の子から、先月のわらべうた「ちびすけどっこいで遊びたいよー!」とリクエストがありました。楽しかったのね。「後でするね。」と言って、『もりのなか』を読み始めると、全員があっという間に絵本の世界に入りました。「ライオンはどうして立つの?四本足の方が歩きやすいよ。」ライオン、ぞう、クマ、絵本世界の動物オールスターの勢ぞろいに、「ぼくもいっしょにさんぽに行きたい!」子どもたちは目の前の絵本の紙を見ているのではなく、遠い森の中を探るようによくよく見ている感じです。「カンガルーのお父さんはどっち?」サルたちが加わってページをめくると、見開きに長い行列のシーンが表れます。「うわー!長い。」ため息がでます。動物たちの数を数えだす男の子。「11もいる。」そして、次はうまい展開が待っています。1ぴきのうさぎが出来て、次はまた見開きに長い行列が表れます。「うさぎはどこ?」「ここにいた!」うさぎは列の前方にいました。「ハンカチおとしはどんな遊び?」「ぼくもロンドン橋おちたで遊びたい!」

お父さんが迎えにきて・・・「誰か来た。」そして、最後のページを読むと、「エッ!終わり???」とひどく驚き、うそーっという感じで前に来て絵本を手に取り、すごい勢いでページをめくります。この後ろにまだ何かあるはずだと。しかし、真っ白な紙を見て我に返ったか、私が表紙と裏表紙を開いて見せると、改めてこの行列を落ち着いた気持ちで見ていました。子どもたちと絵本で至福の時間をいただきました。子どもたち、素敵な時をありがとう。

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