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2014年1月30日 (木)

七わのからす 絵本について

「七わのからす 5」へのコメントを、大変ありがとうございました。そういえば、松岡享子著『昔話絵本を考える』には、フェリクス・ホフマン作の『七わのからす』が取り上げられていましたね。

フェリクス・ホフマン(1932~1972)は、スイスのアーラウに住んでいました。中世の面影が残る自然豊かな街です。ホフマンは、大変子供をかわいがり、4人の子供にそれぞれ絵本を作りました。『おおかみと七ひきのこやぎ』『ねむりひめ』『ラプンツェル』は3人の女の子に、末っ子の男の子には『七ひきのからす』を作りました。

『おおかみと七ひきのこやぎ』のヤギの家はアトリエをモデルにし、両親の家にある時計が描かれています。『ねむりひめ』の王様がお姫様を抱きあげる絵には、父親の強い愛情を感じさせます。末っ子ディーターは、赤いズボンがお気に入りでしたから、絵本の中で、七ばんめのカラスは赤いズボンをはいています。この4冊は、ホフマンが大切にする家族の絵本です。そういう視点で眺めると、『七わのからす』の父親はホフマン自身と似ているような気さえしてきます。こうなると、主人公の女の子は、娘のひとりに思われてなりません。

『ねむりひめ』には、アーウラにある塔など実際あるものが描かれていますが、昔を舞台にしています。しかし、『七わのからす』の主人公が現代風の女の子では、もう昔の世界ではなくなってしまい、お話が持つ深く神秘的な要素との違和感があります。絵本『七わのからす』は、4冊の中でも特にホフマンの家族への思いが強いのかもしれません。

静止した一場面が、ページをめくることによって時間と空間が変化する展開を楽しむのが絵本です。『わごむはどのくらいのびるかしら』(ほるぷ出版)では、その手法をうまく取り入れています。「七わのからす」の世界は横にも縦にも広がる無限大の大きさです。絵本にするには難しさがあるではないかと思います。

堀内誠一さんの『七わのからす』(こどものとも1959、8月号)は、そういう意味からデザイン的象徴的な絵のスタイルなのかなあとも思います。これは、堀内誠一さんの絵本第一作目です。ご本人は、パウル・クレーの遠い敬礼のような作風で描き、「七人の兄さんに会いにいく妹の、磁石に向かって箔が舞い寄って行くような必然的な美しさに驚きます。」と書かれています。

他にも、ツヴェルガーとブライアン・ワイルド・スミスが絵本を出していますが、私はホフマンの絵本に描かれているワタリガラス(*英語題名は、The seven ravens)が好きです。首のところが毛羽立っている特徴をよくとらえています。

カナダの児童図書館員だったリリアン・スミスさんは、『児童文学論』の中で、「絵本のアイデアや感情は、ただおとなの考えや情緒を単純にしたものではあってはいけないので、子どもの心にあるそれらでなければならない」と書いています。

参考資料:『昔話絵本を考える』松岡享子著 日本エディタースクール出版部

       『七わのからす』フェリクス・ホフマンえ 瀬田貞二訳 福音館書店

       『七わのからす』瀬田貞二案 堀内誠一絵 福音館書店(こどものとも)

       『フェリクス・ホフマンの世界』小さな絵本美術館

       『わごむはどのくらいのびるかしら』 ジェリー・ジョイナー絵 ほるぷ出版

       『ぼくの絵本美術館』堀内誠一著 マガジンハウス

       『児童文学論』L.H.スミス著 岩波書店

 

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おはなし(ストーリーテリング)」カテゴリの記事

コメント

こんにちは^^/
七羽のからす、いろいろな視点から掘り下げていかれたのですね。
私は去年のいまごろ、このお話と「出会い」ました。
それまでも語られる昔話として聞いてはいたのですが、たまたまブックトークに入れる「きょうだいのお話」としてこの物語を改めて活字で読んだとき、その深みに引きずり込まれました。
昔話というより、魂の遍歴のものがたりだと思いました。年配の夫婦のひとり子として生まれ(少なくとも本人の視点からはそうだったはず)、一身に愛を受けて育った娘。でも10才頃(と勝手にイメージしています^^;)のある日、実は七人も兄がいて、自分のせいで優しい父から呪いをかけられたのだと知ります。しかも心無い噂話という形で…。どれほど傷つき、存在を否定されたと感じたことでしょう。そこからの時空を超えた旅は、娘が自分の存在の正当性を取り戻すための命がけの旅であったように思えました。
この物語の絵本の絵が現代的になってしまうのは、ひょっとするとテーマがこんな風に現代的に受け取れるものだったからかも…そんな気もします。
いずれにしても、こんなに短い物語の中に、よくぞこれほど普遍的なエッセンスを詰め込んだものだと、先人の知恵には感嘆させられますね!

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