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2013年6月16日 (日)

猫っ皮(イギリスの昔話) その1

「猫っ皮」は、イギリスの昔話のひとつで、ジョーゼフ・ジェイコブズ(1854-1916)の編集・再話による『More English Fairy Tales』(1894)にのっています。ジェイコブズはオーストラリア生まれでケンブリッジ大学に入り、その後ロンドンで文芸批評の仕事をはじめました。ユダヤの研究家でもある彼は、昔話に興味を持ち1878年にイギリス民俗学会が発足するとその会長も務めました。アメリカに移住して最後は、ニューヨークに住みました。

ジェイコブズの昔話集の特徴は、大英博物館にある記録から掘り起し、子供向けに再話したということです。自分の子どもに何度も話して聞かせてから、再話を完成させました。絶えず子どもに語って作られたお話の数々を、『子どもに語るイギリスの昔話』(こぐま社)で松岡享子さんは、「方言らしいことばや、古いことば、あるいは口語的な表現や、見慣れない綴りなどがあるのですが、それでも、かまわず声に出して読んでみると、なんとも心地よいリズムがあり、お話の中の人物の素朴さ、豪胆さ、ロマンチシズムなどが、とても身近に感じられる。」と書かれています。

世界で300以上あるシンデレラ物語の中で、一番古いのは中国の「葉限」です。それが、東洋に広まりヨーロッパに伝わったのではないかと考えられています。そして、比較的古いお話が、「いぐさのずきん」「猫っ皮」となっています。ジェイコブズは、「猫っ皮」をチャップブックに出典を求め、いくつかの類話から魔法のドレスを要求する話を再話したとしています。

○大きな財産を持つ身分の高い父親は、それを引き継ぐ息子がほしいと願います。生まれたのは、この世に二人といない可愛い女の子でしたが、父親は娘をまったく愛さず、娘は15歳になった時に年取った荒くれ男と結婚させられそうになり、鳥飼いのおかみさんに相談に行きます。

鳥飼いのおかみさんの助言で、娘は銀の着物、金の着物、空を飛ぶ鳥という鳥の羽根を集めて作った着物、猫の皮の着物を相手の男に要求します。男はすべて叶えてしまいます。そこで、娘は猫の皮の着物を着て、森に逃げ込みました。

<鳥飼いのおかみさん>

同じジェイコブズ再話の「くるみわりのケイト」にも出てくる魔女であろうと思われます。

「くるみわりのケイト」では、娘のアンがなべの蓋をとると可愛い頭が転げ落ち、羊の頭がくっつくという強力な魔法をかける魔女として出てきます。「猫っ皮」では、相談にのり対策を考えてくれる援助者として登場します。特に魔法という言葉は出てこないので見落としてしまうのですが、ジェイコブズは解説で「魔法の着物」と書いています。何かの形で、ここに魔法がきいているのでしょう。

<魔法の着物>

銀の着物 silver cloth ⇒ 金の着物 beaten gold cloth ⇒ 空を飛ぶ鳥という鳥の羽根を集めた着物 ⇒ 猫の皮の着物 catskin

要求する着物がだんだん死に近いものに変化していくことから、娘の気持ちをうまく表しています。

一度も娘の母親は登場しません。しかし、私は、娘は鳥飼いのおかみさんに相談はしていますが、その着物には母親の祈りにも似た、娘を思う尊いmagicがかけられている・・・と思いたいのです。

<グリム童話「千枚皮」との比較>

よく比較される昔話に、グリム童話の「千枚皮」があります。亡き母にそっくりな美しい金の髪の娘は父親に求婚されました。娘は太陽のような金色のドレス、月のような銀色のドレス、星のように輝くドレス、千種類のケモノの毛皮を集めたマントを要求します。そして、金の指輪と金の紡ぎ車と金の糸巻とドレスをクルミの殻につめてマントを纏って、森へ逃げ込みます。そして、顔と手にはすすを塗って真っ黒にしました。森の持ち主に見つかって台所の下働き女中として雇われます。

<猫の皮>

一方、「猫っ皮」の娘は、猫の皮です。イタリアのバジーレ(1575-1631)が収集した『ペンタメローネ』には、「灰まみれの雌猫」という題名の昔話があります。ヨーロッパで、シンデレラは一般に<いろり猫>(Hearth Cat)の仇名で通っているそうです。継子がかまどの隅に追いやられ、灰だらけになっている話はたくさんあります。また、ヨーロッパでは女性でメス猫というと性的表現になり、高貴で身も心も美しい娘が卑しめられた悲哀が題名から伝わってきます。

○猫っ皮は、森の中に着物を隠し自分からお城に行って雇われます。しかし、猫の皮をかぶった汚いなりから見下され、城の中でも最下位の皿洗い女として落ちぶれてしまいます。意地の悪い料理番は汚らしい猫の皮をかぶった娘をいじめます。お城で最下位の仕事の中でも、皿洗いよりは上にある料理番は、彼女を「dirty slut」(売春婦・だらしのない女)と罵倒します。イギリスらしい身分社会の様子が、伝わってきますね。

死んだ動物の毛皮は、死を意味します。また、境界にある森も娘が精神的な死の状態にあることを示すと思います。そこには、日本の昔話「姥皮」や「鉢かずき」との類似性もでてくるようです。つづきは、「猫っ皮」その2で。

   -------- 「猫っ皮」その2に続くーーーーー

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コメント

ねことかまどの関係…で、「猫の事務所」(宮沢賢治)のかまどねこ(?)を思い出しました。灰で汚れていて、ほかの猫たちからいじめられるのですよね、 たしか…。昔はかまどで暖をとり、灰で汚れた猫が時々いたのかな? 本来身づくろいの上手な動物が灰まみれになっている姿は、人々の想像力をかきたてたのかもしれませんね…
それと「鳥飼のおかみさん」。人の魂を鳥にして籠に閉じ込めている、ヨリンダとヨリンゲルの魔女をちょっと思い出しましたが、たまたま手元にくるみ割りのケイトの原文があったので、見てみたら、hen-wifeとなっていて、これは辞書では「家禽飼育係の女」となっていました。つまり森の魔女とは違って、ぐっと身近な場所にいる、得体の知れない存在なのだなぁ、と。「ねこっ皮」もhen-wifeなのかな? hen-wifeは、普通の規範からはみだした領域で生きていたのでしょうか? おもいろいですね(^^)

ポスター屋さんでアーサー・ラッカムの絵を見てたらこんなのを見つけました。どんな話かとぐぐってここを見つけました。話がわかってよかったです。ありがとう。
http://www.allposters.co.jp/-sp/Catskin-Posters_i12778415_.htm

ひろさま、お役に立てて幸いです。私もアーサー・ラッカムの絵は見ました。とてもリアルな猫の皮ですね。

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